数学応用イノベーションのすすめ

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 イノベーションの多くは,画期的な要素技術がもたらしてきました.古く
はイギリス産業革命の蒸気機関であり,最近であればコンピュータ技術,通
信技術などが挙げられましょう.
 ところが,画期的な要素技術には二通りあって,導入するだけで済むよう
なものと,そうでないものがあります.かつて,ハーモニックドライブとい
う減速機を用いたことがありますが,使うだけで大幅な小型軽量化が実現で
きました.近年,急速に普及し始めたドローン技術も,導入するだけでイノ
ベーションになりそうです.
 一方,使い方の良否で画期的機能が左右される場合,単に導入するだけで
は,技術革新にならないものがあります.コンピュータ技術,特にソフトに
関するものは注意が必要で,数学応用力が必要になります.
 例えば,設計におけるコンピュータ利用技術がそうです.色々な設計ツールが市販されていますが, 誰でも使えるのは作図に使うCADソフトくらいです.有限要素法を含むCAEソフトとなると,ある程度の知識は必要になります. さらに制御系まで含んだ機構解析ソフトになると,利用できる範囲に注意しながら使いこなす技量が必要になり, 与えられた例題以外で,満足できる結果を得ることが難しくなります.もちろん,上手くやって独自の発明などが生まれれば, 画期的なイノベーションになります.
 こういうとき,ソフト内部で行われている計算を理解し,うまく対応する数学応用力が試されるわけですが, 最近は,色々と便利な設計ツールのお蔭で,逆に内部の計算にまで踏み込む機会が少なくなりました. その結果,技術者にとって必要な数学応用力を養う機会が著しく減ってしまい,いざというときの数学応用力は低下する一方のようです.
 例えば,スペクトル解析などは,信号(数値ベクトル)を入力すればそれで正しい結果を提示してくれるのですが, データ長が短すぎるとうまくゆきません.そうした事実に気づき,別の良い解析方法を選択するには,数学力だけでは不十分です.
 まず,鵜呑みにしない姿勢が必要です.市販ソフトを信じ切ってしまう素直過ぎる人は,問題に気付くこともできません. そして,課題や問題を科学的に把握し,適切な対応を導くには,対象を正確に記述する能力が必要になります.
数学が重要であるのは,現象の記述に適した言語が数学であり,それに代わるものがないからです. 私たちは,対象を数学という言語で記述することをモデル化とか定式化,あるいは数式表現とか言います. このモデル化の技量がとても重要なのですが,モデル化すれば何でも良いわけではありません. やはり,解きやすいモデルで表現する方がよく,どういう表現なら解けるのか?と言うのは, どうしても数学の知識が必要になってきます.  この辺の知識を備えるには,能力のある個人が多くの経験を積むことで初めて可能になります. 問題は,このような人材をどうやって獲得するか?ということです. この問題に対して①~③の方策が考えられますが,お薦めは③です.

①社内で数学応用人材を発掘する

 情報化時代を予測して,自ら数学応用力を研鑽する人は結構います.時代が変わっても日本人技術者は真面目で勉強熱心です.  以前の勤務先で,色々な数学的手法とその適用対象を紹介する社内セミナーを開催したことがありますが, 非常に多くの社員が進んで受講してくれました.受講して数年後に,もう一度受講したいという人もいたくらいです. 大学で受講した数学であれば,演習問題を簡単に解いてしまう,ハイレベルな人も結構いました. しかし,めきめきと数学応用力を向上できる適任者となると,決して多くありません.  適任者の条件は,論理を重視する人で,企業の慣例とか慣習とかしきたりなど一切気に留めないような人です. 自分が納得すれば命令されなくても自発的に行動し,納得しなければ命令も聞かないタイプです.上司の命令に素直なタイプは向いていません. 社内の部分的組織を第一に考えるような人でもありません.どちらかと言えば日本人サラリーマンとしては,失格者のような人です. ただし,企業の理念とか収益を第一に考える人でないといけません.  数学の仕事を楽しんでも構いませんが,理念や収益に反するときは,潔く撤退する企業人マインドは備えている必要があります. イノベーションに向いている人は,新人の頃から,役に立つことは何でも自ら進んで自学自習して仕事に活用しており, ほぼ間違いなく,何らかの成果を挙げています.入社5年以上であれば,数学を応用した発明提案をしていると思います. 社内で「数学応用に自信ある人を探しています」などと募集しても応募するとは限りません. むしろ,発明提案書から,適任者を探すことをお薦めします.

②社内で数学応用人材を育成する

 いわゆる一部上場の大企業などでは,一流大学の大学院を修了した秀才が沢山入社していますから, 誰か社員を指名して,一定期間の教育をすれば,うまくゆくと考える人(中間管理職)は多いようです. また,CAEのツールベンダーも有料の習得セミナーを開催し,それを受講すればうまくゆくような宣伝をしています. でも,その狙いはツールのライセンス数増加や新規ツールの購買促進だったりして,肝心の製品開発まで責任をもって対応するはずはありません. 指名された社員も,うまくゆかなければ,指名した上司の命令に従ったことを言い訳にするのが普通でして,ほぼ間違いなくうまくゆきません. そもそも,本業から外れた業務に就くことを喜ぶ人は余りいません. もちろん,自ら進んで志願するのであれば,それは良いのですが,志願した人に適性があるとは限りません.
 そのような訳で,数学応用人材を社内教育することは,余りお薦めできません.

③数学屋ほん舗に相談する

 あまり深く考えず,弊社にご相談ください.真面目な内容であれば,匿名でのご相談にも応じます. 初期の相談に費用はかかりません. 課題の詳しい内容と解決の目的,意義(解決で期待できる利得)を教えてください. お客様の立場に立って,アドバイスさせていただきます.

 数学屋ほん舗で扱っている,精密機械のモデルベース開発(MBD)や半導体の生産性向上提案などは,まさに数学応用イノベーションそのものです.

 数学屋ほん舗のモットーは三方よし(買手・売手・世間)です.
お客様と目的を共有し,最善の方法を提案します.

数学屋とは,数学教師ではありません.数学者でもありません.
事業の目的を明確化し,効果的な解決策を科学的に導く技術者です.
数学屋にとっての数学は,大切な道具ですが,所詮は道具に過ぎません.
大切なのは事業の成功です.

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(2019年 7月11日更新)
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